ボードゲームの妄想書き散らし処

作ったものとかまとめます。

パチスロシミュレーター:サポートページ

この記事は『パチスロシミュレーター』のサポートページです。

 

【①記録シートの予備】

ゲームで使用する記録シートが足りなくなった方のために、記録シートのデータを公開します。こちらからダウンロードし、A4サイズで印刷してご利用ください。

drive.google.com

 

【②バリアントルール】

スペースの関係で説明書に入れることが出来なかったバリアントルールをここに載せておきます。些細なものではありますが、ゲームにアクセントを加えたい方は是非お試しください。

 

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6.0 バリアントルール

プレイヤーの習熟度に応じて以下のルールを導入してみても良いでしょう。

この他にもプレイヤー同士が合意するなら、好きにルールを変更しても構いません。

6.1「時間の調整」

「メインフェイズ」と「時間調整フェイズ」は時間が定められていますが、プレイヤー同士が合意するなら、その時間を増やしたり、減らしたりしても構いません。

ただしこのルールを導入するかはゲーム開始時に決定してください。

ゲームの途中で時間を変更してはいけません。

6.2「長い一日」

これはラウンドの概念を無くすルールです。

プレイヤーは一番初めの「抽選フェイズ」が終了した後、「メインフェイズ」を20分間行います。それが終了したなら、「設定開示フェイズ」に入ります。

【アクション:稼働終了】はメインフェイズ中ならいつでも行うことが出来ます。

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【③カードサイズ】

パチスロシミュレーター』にスリーブを使用したい方は「名刺サイズ」のスリーブをお買い求めください。ゲームで主に使用する「小役カード」の枚数は「120枚」、その他カードも含めると全部で「131枚」です。

 

 

【④問い合わせ】

ゲームについて何か分からないことがある、聞きたいことがあるという方は、Megalomaniac Game公式ツイッター(@Megalomaniac_G)にDMをしていただくか、こちらのアドレス(megalomaniacgame@gmail.com)にメールを送ってもらえるとお答えできるかと思います。よろしくお願いします。

パチスロシミュレーター:デザイナーズノート

1.はじめに

 この記事はゲームマーケット2022秋にて発売される新作ボドゲパチスロシミュレーター』の作者が、なぜこのようなゲームを作ったのかを自分で解説する記事だ。

 言うなればデザイナーズノートの様なものだが、そこまで厳かなものではない。ほとんどの人にとっては興味がないものだろうけど、ゲーム制作者の思考が知りたいという酔狂な人が読んでくれると嬉しい。

 

内容は『パチスロシミュレーター』のシステムについて細かく解説……というよりは「パチスロ」がテーマのゲームを何故作ることになったのか、つまりコンセプトの話が中心になっている。ゲーム自体に興味がない人でもそれなりに楽しく読めるようにはするつもりである。

 

パチスロシミュレーター』がどんなゲームか知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

gamemarket.jp

 

2.僕がこの記事を書いている訳 ~同人ゲームの魅力~

 僕は「パーティ太郎」という(ふざけた)名前で同人ゲームを製作している。これまで2つのマーダーミステリーと2つのボードゲームを世に出した。

そして来たる10月29日に開催される「ゲームマーケット2022秋」でも新作を発売する予定だ。そしてこの大量の同人ゲームが発売される「ゲームマーケット」というイベントは非常に楽しく、エキサイティングなイベントだと僕は思う。

 

 だけど「同人ゲームはハズレが多く、値段も割高。評判の良いゲームは後から出る商業版を買えばいい」という考えの人も結構いるだろう。この意見は実際的を得ている。同人ゲームの多くは所謂普通のボードゲームと比べて調整が荒いゲームは多いし、コンポーネントも値段の割にはチープになりがちだ。

 たまに化け物みたいな傑作が発売されることもあるが、それを探すため毎回イベントに行き、ゲームを大量に買うというのは、あまりに割に合わない行動だと思う。

 

じゃあ同人ゲームの魅力は何だと聞かれたら、僕は「商業作品と比べると制約無く、好き勝手作れること」だと思う。

同人ボードゲームは基本的に制約がない。

お金というリスクを払えば好きな作品を創ることが出来る。

それだから商売というよりは、自分の好みをこれでもかというくらい詰め込んだゲームや、尖がったゲームを出すことも出来る。勿論それが売れるかとか、評価されるかというのは別としてね。

「俺の好きなものを詰め込んだからていってくれ!」みたいなゲームはとても楽しい。作品を通して作者を知れるというのが同人ゲームの大きな魅力だと僕は感じている。同人ゲームにおいて作者の存在は極めて大きいものだと言えるだろう。

 

(まあ実際には全ての同人ゲームがそうではないし、大手が発売しているようなボードゲームが作者の好みやこだわりを反映していないのかというと全然そういうわけではないが……しかしゲームマーケットのような即売会は、作者が手渡しで商品を売るというのも相まって、そういった幻想を抱かせてくれる場だと思う)

(文字ばかりの記事を憂いて挿入される特に意味のない画像)

 

だからこそ僕は同人ゲームの作者には、自分の作品のシステムやコンセプト、どういった意図で作ったのかをもっと解説して欲しい。例えば「〇〇というゲームが好きなんですが、△△の部分が現代的ではないと感じたので、このような意図でアレンジしました!」と示してくれれば、ゲームをプレイするときにそのような角度で評価して楽しむことが出来る。

実際にその試みが成功していなくても、コンセプトが明瞭に示されているなら、それが「なぜ上手くいかなかったのか」を分析して楽しむことが出来るからだ。そういったことが出来るのが、購入者と作者の距離が近い同人ゲームならではの魅力だと言えるのではないだろうか。

 

これが一般的なものかは分からないが、僕はこういう考えでゲムマを楽しんでいるし、ゲームを製作している。僕が毎回自作ゲームの紹介を書いて制作意図を示すのは、こういった考えによるものだ。

勿論ゲーム単体で見ても、僕自身は面白いと思えるものを作っている。

だけど僕はまだまだ未熟だし、試みが上手く成功しているかは分からない。

実際買ってみたけど、自分とは合わないということもあるだろう。

 

そういう時のために、様々な角度からゲームを楽しめるように、自分の考えや制作意図を書き記している。この記事を書いているのもそういう理由だ。

 

 

3.何を重視してゲームをやるのか?

じゃあ次に今回は何をコンセプトにしたのかという話に入っていこう。

その前に1つ、「ゲームをプレイする際に何を重要視するのか」という部分に触れておきたい。

「何を重視してゲームをやるのか?」、この答えは人によって千差万別だ。

コミュニケーションツールとしてゲームをやるのか、システムの美しさを重視するのか、はたまたテーマへの没入感を求めるのか。

これらの要素はどれも多かれ少なかれ、僕もゲームに求めているものではある。

でも僕が何を重視してゲームをプレイしているかというと「新しいものに出会いたいから」というのが一番だと思う。

今までの自分が触れたことのない新しいシステムやアイデアに触れるのは、非常に刺激的で楽しい瞬間だ。勿論システムが洗練されたゲームだって楽しむが、一番底の部分にはそういったもの出会いたいという気持ちが常にある。(だからゲームマーケットが好きなのかもしれない)

(アナログにしろデジタルにしろ、新しいものに触れるのはいつだって楽しい)

 

それだから僕は自分が制作するゲームに「何らかの新鮮さ」を取り入れたいと思っている。でもこれは思っている以上に大変なこと。だって僕らは天才ではないからだ。

基本的に僕らが思いつくアイデアは、知らないだけでどこかで試されていたり、組み込んでみようと考えたが欠陥があって没になっていると思った方がいい。

人類の長い歴史の中で自分が一番初めに思いついた、と考えるのは客観的に自分を評価できる程の知識と経験が無いか、それか本当の天才のどっちかだろう。

 

それに「独創的」と評されるゲームの全てのシステムが、これまで見たことない新鮮なものかというとそうではない。中核となるアイデアは新鮮でも、その脇を固めるシステムはこれまでのゲームを土台にしていたり、それまでのゲームジャンルを踏まえた上でひねりを加えたり。そういったゲームが「独創的」だと評価される。

 

要するに何が言いたいのか。

つまり「何らかの新鮮さを取り入れたゲーム」を作りたいのなら、他のゲームの知識や分析が必須だと言うことだ。だからこそ、僕はどのようなゲームを作れば「新鮮な体験」をプレイヤーに与えられるかを考えることにした。

 

4.新しさに満ち溢れた2つのゲーム

ではここで僕が「独創的」だと感じたゲームを2つ紹介しよう。

前例を見ることで何かしらの共通点が見えてくるかもしれない。

 

1つ目は『ミレニアムブレード』だ。

『ミレニアムブレード』はいわゆるTCGをモチーフにしたボードゲームだ。

基本セットだけでも600枚を超えるカードが登場する、この(イカれた)ゲームは様々なアイデアに満ちている。例えばボードゲームの要素とTCGの要素が組み合わさった戦闘システムや、デッキ構築が主流のボードゲームにおいて、あえて構築と戦闘のフェイズを切り離し、リアルタイムで管理させるという部分も特筆すべきところだ。

 

だがやはり『ミレニアムブレード』の何が一番「独創的」だったのかと言われれば、大量のカードを用いてTCGのゲームとしての面白さ」ではなく、「TCGを趣味として遊ぶ面白さ」を再現しようとした点だろう。

『ミレニアムブレード』では「パックを向いて強いカードが当たる」「出たカードで自分だけのデッキを作る」「シングルを売買してカードを揃える」「友達とカードをトレードする」「コレクションを作る」といったTCGを遊ぶ上で必要不可欠な体験をゲームに取り入れている。TCGライクなボードゲームは沢山あるが、基本的にそれらの多くは「カード同士のコンボ」「プレイヤーの読み合い」といった「TCGというゲームの面白さ」を追求したものだった。

ゲームシステムだけ見るなら、かなり荒々しく実力だけではどうにもならない部分はある。しかし『ミレニアムブレード』のこの一連の試みは、とても新鮮でエキサイティングなものに思えた。

 

2つ目のゲームは『タイムオブサッカー』だ。

これは見た通りサッカーをテーマにしたゲームだ。

プレイヤーはサッカークラブのオーナーとなって強いチームを作り、優勝を目指す。

いわゆる「スポーツ経営シミュレーションゲームボードゲームに落とし込んだものだといえるだろう。(わかりやすいのはサカつく

このゲームがイカれているのは120分でサッカーの1シーズンを全てやりきろうとしている所にある。プレイヤーは選手を集めてチームを作る。そのステータス管理は複雑で難解、だからこそやりごたえがあるシステムになっている。

そして選手だけでなく、チームを管理するスタッフや広告の獲得といったものも同時に行わなくてはならない。プレイヤーはチームに関わるあらゆるものに対して決定を下さねばならない。

そうやって強いチームを作っても、試合はダイスで行われ、圧倒的に有利な状況でも負けることはあり得る。これを運ゲーだと評する人もいるだろう。(実際そう)

だが僕は絶対に勝つ、絶対に負けることがないからこそ、ダイスの出目に一喜一憂できるし、サッカーというスポーツが持つ熱を上手く表現できていると感じる。システムの特異性も相まって『タイムオブサッカー』は他のゲームでは味わえない楽しさに満ちている。

 

5.2つのゲームの共通点は何か?

『ミレニアムブレード』と『タイムオブサッカー』、これら2つは「独創的」なゲームであると思う。ではこれらに共通点を見出すことは出来るのだろうか?

 

僕はこれら2つのゲームは「別のジャンルの面白さを再現しようとしたもの」だと考えた。例えば『ミレニアムブレード』はTCGという1つの遊びに触れる上で体験できる面白さや感動を上手く再現しようと試みている。

『タイムオブサッカー』はサッカークラブ経営という枠組みの中で、戦略を立てる楽しさや試合結果に一喜一憂する面白さを再現しようとしている。

 

これらの面白さは本来TCGのコミュニティ」や「スポーツ経営シミュレーション」で味わえる類のもだ。それらを親しんでいる人にとってはいつも味わっている面白さと言えよう。しかし普段それに触れていない人にとってはとても新鮮なものに見えるのではないか?

 

僕が注目したのはこの部分だ。

もし「別の遊びやジャンルの面白さを再現すること」が出来たなら、それはボードゲーマーには新鮮なゲームとして受け入れられるのではないか?

 

この実験的な考えが、今作『パチスロシミュレーター』を作るきっかけになっている。そして面白さを再現しようとしている遊びとは当然パチスロのことである。

 

6.パチスロの面白さとは何か

なぜ「パチスロ」というテーマでゲームを出したのか、これにはいくつか理由がある。

例えば販売戦略の面。ゲムマでは大量のゲームが発売されるため、どうにかして注目して貰う必要がある。その中でパチスロというあまり見ないテーマはアピールポイントになると考えたからだ。

 

だが一番の理由は「パチスロ」が独自のゲーム性を持っているからだ。

その前にパチスロについて詳しくない人がいるだろうか軽く解説を行おう。

 

パチスロの面白さとは何か。これも人によっては様々だろう。

単純に金が増減するギャンブルとしての面白さ、または光と音が作り出す演出が堪らないという人もいるだろう。だが僕はパチスロの面白さは「設定判別」というゲーム性にあると考えている。

 

そもそもパチスロはどのような理論で勝つギャンブルなのか。

スロット台には「設定」というものが存在する。設定は大まかに1~6まで存在し、パチンコ店はそれを1日単位で好きに変更することが出来る。

「設定」にはず~っと打ち続けてたら、これくらい儲かるよ、これくらい損するよ、という基準値(機械割という)が定められている。もちろん必ずしもその基準値通りになるわけではないが、長い目で見ればその基準値に収束するようになっているのだ。

つまり台に座る前から設定が分かっているなら、基本的にパチスロは絶対に負けないギャンブルだと言ってもいい。だがそんなに簡単な話ではなく、見た目だけでは設定を見分けることが出来ない。

だからプレイヤーは実際に遊戯して、データを取って設定を調べていく。

この「設定を少しずつ探っていく」というのがパチスロのゲーム性だ。

 

僕はそこまでパチスロを打つわけではないが(こうやって書くと言い訳みたいで嫌だけど)、初めてそれに触れた時、このゲーム性は新鮮で面白いと感じた。

この体験はパチスロ独自のものだし、「別の遊びやジャンルの面白さを再現すること」においてはもってこいのテーマだ。こうしてパチスロの面白さを再現すること」をコンセプトに決めて、『パチスロシミュレーター』の制作が始まった。

 

7.面白さの再現

この記事ではそれぞれシステムについて細かな解説を入れることはしない。

何故ならそんな話をし出すと、更に難解で分かりにくい話になってしまうからだ。

もし機会があったら、ゲームの変遷を細かく記載するかもしれない。が、今回ではない。ここでは製作する上で意識していたことを簡単にまとめる程度にしておこう。

 

パチスロシミュレーター』を製作する際、特に意識したのは2点。

①「設定判別」をゲームの中心に添える

②「テーマの再現」ではなく、「面白さを再現」すること

 

1つ目の「設定判別をゲームの中心に添える」、これは『パチスロシミュレーター』があくまで「設定判別をボードゲームに落とし込む」のが主目的であることを意味している。

例えば『パチスロシミュレーター』では専用のシートとペンを使うので、既存の紙ペンゲームなどの要素を取り込むことも出来た。確かにこれは実際に試したし、そう悪いものではなかった。しかし「紙ペン的面白さ」と「設定判別の面白さ」が綺麗に合体しているというよりは、それぞれの要素が独立した面白さを主張しているという印象を受けた。

であるならば、いろんな要素を足すよりも「設定判別の要素をボードゲームに落とし込む」という部分をより強く押し出した方が引き締まったゲームになるのではないかと感じた。『パチスロシミュレーター』は既存作品のシステムを踏襲したというよりは、ワンアイデアを煮詰めて出来上がったゲームだ。

要素を足してバランスを取るより、ワンアイデアの鋭さで勝負する方が効果的であると考えた。そのため「設定判別」以外の要素はあまり取り入れず、入れたとしても目立ちすぎないように調整を行うことにした。

(ゲームの中心はあくまで6つの山札の推測すること)

 

ゲーム的に物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、僕は「30分のゲーム」としてはこのくらいシンプルな方が良いと感じている。

 

 

 

2つ目は「テーマの再現ではなく、面白さを再現すること」

パチスロシミュレーター』は現実のパチスロを意識しているが、実際のスロット台と異なる部分は多く存在している。パチスロに詳しい人が見たら、「そうじゃないだろ!」と叫びたくなる部分もあるんじゃなかろうかと思っている。

だが僕がやろうとしたのは、あくまで「面白さの再現」であって、「テーマの再現」ではないのだ。「別の遊びの面白さを再現すること」と「テーマを再現すること」は全く別のものだと思って欲しい。

例えば選挙をテーマにしたゲームがあったとしよう。

「テーマの再現」にこだわって実際の規則や法律を限りなく再現したゲームが出来上がったとする。だがそれは本当に面白いゲームなのだろうか?いや、きっとそれは複雑な処理が大量にある面倒なゲームでしかない。(これはこれで好きな人はいるだろうが)

 

つまり僕が言いたいのはテーマを再現するのが必ずしも良いとは限らないってことだ。

僕らが作るのはあくまでゲームで、それは楽しいものであるべきだ。

だからパチスロの面白い部分、人から愛される部分はしっかり抜き出しつつも、その再現にこだわり過ぎないように気を付けた。結果、「らしさ」と「面白さ」が両立した作品になっていると思う。

 

8.考察:なぜパチスロボードゲームが存在しないのか?

まとめに入る前にもう1つだけ触れておきたい議題がある。

それは「なぜパチスロボードゲームが存在しないのか?」という点だ。

僕は『パチスロシミュレーター』を作成する際に、似たようなコンセプトのゲームが無いのか調べた。だが僕が調べた限りではパチスロの設定判別」をテーマにしたゲームは見つからなかった。(単純に僕のリサーチ能力が足りてないのもあるけど)

ここで「僕が初めて思いついたんだ!やったー!」と考えるのは危険だ。

先に述べた通り、自分が思いつくアイデアは他人が既に考え付いていると思った方がいい。だとするならなぜパチスロのゲームが出ないのか?これは「パチスロのゲーム性」がいくつかの問題を抱えているからだと僕は考えている。

ここでは僕が考えた「パチスロボードゲームに落とし込む」際の問題についていくつか取りまとめることにしよう。

 

【問題①:パチスロのゲーム性は長時間の遊戯で成立するものであること】

パチスロにおいて設定を推測することがメインのゲーム性だと述べたが、実際にはそれは非常に長い時間かけて行うものだ。パチスロの場合、2~3時間とかそのくらいの時間をかけなくてはゲームとして成り立たない。これは大量のデータから設定を推測するというゲームを成立させるにはしょうがない部分ではある。しかし結果としてプレイヤーは長い時間単純な動作をずっと繰り返すことになる。パチスロの場合、これをギャンブルという要素や演出で誤魔化しているが、ボードゲームの場合はそうもいかない。

パチスロのゲーム性を再現するためには「データ集め」という段階を踏む必要があり、それは単調で退屈なものになる可能性が高い。

 

【問題②:事前に知識を入れておく必要があること】

パチスロで設定判別をする上で必要になるのは台の知識だ。

どういった部分に設定差があるのか知っておかなければ推測することも出来ない。

これをそのままボードゲームに落とし込むとなると、プレイヤー全員に事前に攻略法を憶えて貰う必要が出てくる。それは非常に手間だし、面倒だ。ゲームをプレイする前に何かを憶える必要があるというのは、プレイヤーにとってはプラスの要素ではない。



他にも挙げようと思えばいくつかあるのだろうが、僕はこの【問題①】と【問題②】が特に大きな課題であると考えた。一応『パチスロシミュレーター』ではこの問題に対して対策を行っている。

例えば【問題①】に対しては、それぞれの設定差をかなりわかりやすいものにすることで、そこまで長い時間を掛けずにも推測が行えるようにしている。加えてリアルタイムでゲームを管理し、決められた時間で必ずゲームを終了させることで、同じ動作の繰り返しというストレスを許容できる範囲に抑え込もうと試みている。

【問題②】に対しては説明書に「設定判別の進め方」という簡易的な攻略法を付属し、初プレイの際にそれを共有するように指示することで、何も分からないという事故が起きる可能性を減らしている。また、ついたてに記載された各設定ごとのグラフは、初心者が直感的に推測が行えるように実装されたものだ。

(プレイヤーはグラフを用いてざっくり推測することもできる)

 

このように2つの問題に対して対策を講じてはいるが(実際僕は許容できる範囲だと判断した)、この部分がウィークポイントであることは違いない。

パチスロシミュレーター』でも「大量のシャッフル」という事象を生み出しているし、よく分からないままゲームを始めて何も分からないまま終わるというプレイヤーが発生する可能性はある。

 

もし今後似たような要素でゲームを作ろうとするなら、この2つの問題は大きな足かせになるだろう。だが同時に「設定判別の要素」、というかある程度の法則で生成されるデータを基に推測を行うという要素には可能性も感じている。

今回はその部分に可能な限りスポットライトを当て、「パチスロ」というテーマでまとめ上げたが、それにこだわらずとも他のゲームに実装できるシステムではないか。例えば単調になりがちな「データ集め」の部分を、何か別の要素を足して面白さを補填できるのなら、別の形でゲームを完成させることも可能だろう。

 

パチスロシミュレーター』を面白いと感じてくれた誰かが、似たようなアプローチでゲームを作ってくれないかなと、僕は期待している。

勿論、この記事を読んでいる君たちがやってくれても構わないよ。

 

9.まとめ

長くなったから、最後に要点をまとめよう。

①同人ゲームの魅力は「作者がある程度好き勝手に制作できること」

②だから同人ゲームの作者はコンセプトを明確に示すべき。

③何か「新しい体験」が出来るゲームを製作したかった。

「別の遊びやジャンルの面白さを再現すること」で、それに馴染みが無い人にとっては新鮮なものに見える。

⑤今回やろうとしたのはパチスロの面白さ」を再現すること。

「設定判別」をボードゲームに落とし込むという軸はぶらさない。

⑦あくまで「テーマの再現」ではなく「面白さの再現」を目指す。

パチスロのゲーム性をボードゲームに落とし込むのには課題もあるが、発展の余地も残っている。

 

さあ、長かった記事もこれでおしまい。

最後の方は「公式がネガキャンしてんのか?」と疑うような内容になったが、興味をもってくれた人には誠実な方がいいだろう。それに記事で挙げた問題は確かにありつつも、今作ではそのストレスを出来るだけ軽減するようにもしている。

そして何よりも当初の目的、パチスロの面白さを再現すること」、「新しい体験が出来るゲームを作ること」といった部分に関しては間違いのないものが出来たはずだ。僕自身は『パチスロシミュレーター』をかなり面白い作品だと思っているよ。

洗練された傑作……という感じではないかもだけど、荒々しく尖がった同人らしい魅力の詰まったゲームではある。少しでも興味を持っているなら是非遊んでみて欲しい。

 

パチスロシミュレーター』はゲームマーケット2022秋に「土イ37‐サイシュピール」ブースにて販売される。価格は2500円。

確実に手に入れたい方はこちらの取り置き予約フォームの利用がオススメだ。

ゲムマ2022秋「サイシュピール」取り置き予約フォーム

 

 

買ってくれた方は普通に遊んで楽しむのも良し。

この記事にいくつか示した、

・本当に『パチスロシミュレーター』は新しい体験が出来るゲームか?

・「別の遊びやジャンルの面白さを再現する」という手法は再現性があるのか?

・「パチスロの面白さ」をきちんとゲームに落とし込めているのか?

・「パチスロ」の要素をゲームに落とし込む時ネックになるのは何か?

といった視点で分析して楽しんでもいいだろう。それでレビューなんか書いてくれたら僕としては最高だ。

まあいずれにせよ、どんな形であれ楽しんでくれたら、作者としては嬉しいな。

是非ゲームマーケット会場でお会いしましょう。

 

10.おまけ

この記事を読んで興味を持ってくれたなら、是非僕が過去に出したゲームもチェックしてみて欲しい。特にボードゲーム2種はゲームマーケットにも持ち込むから、ついでに買ってみるなんてことしてくれたらとっても嬉しい。

 

コンクルージョンは3人用トリックテイキングゲーム。

コンセプトは「コルージョンを3人用にアレンジしつつ、遊びやすくすること」

▼紹介記事

ゲーム紹介『コンクルージョン』 - ボードゲームの妄想書き散らし処

 

『解脱RTAは3~4人用の小箱ゲーム。

コンセプトは「30分で手軽にマルチの面白さを味わえるゲーム」

▼紹介記事

新作ボドゲ【解脱RTA】発売前パーフェクト攻略ガイド | 『ゲームマーケット』公式サイト | 国内最大規模のアナログゲーム・ テーブルゲーム・ボードゲーム イベント

 

『七つの死体と一人の男』は2人用マーダーミステリー。

コンセプトは「初心者が1時間でマダミスの面白さを体験できるゲーム」

▼ゲーム(無料です)

2人用マーダーミステリー『七つの死体と一人の男』|パーティ太郎|note

 

『超能力者バトルロワイヤル』は5人用マーダーミステリー。

コンセプトは「パッケージでマーダーミステリーを作る意味」

ただこの作品は今在庫が無いから買うことは出来ないけど……

 

 

MegalomaniacGame公式アカウントはゲームに関する最新情報を呟いている。

興味を持ってくれた方はぜひフォローを!(@Megalomaniac_G)

 

 

ゲーム紹介『コンクルージョン』

【Megalomaniac Game】は2022年9月3日・4日に開催される「ボードゲーム大祭2022」にて新作トリックテイキングゲーム、『コンクルージョン』を頒布します。

 

今回の記事ではこの謎に包まれたゲームについて

・いったいどんなゲームなのか?

・どんな人にオススメなのか?

を紹介する予定です。是非ご購入の参考にしていただけますと幸いです。

 

1.概要

コンクルージョン

プレイ人数 3人専用

プレイ時間 45分

対象年齢  10歳以上

 

コンクルージョン』はトリックテイキングと呼ばれるタイプのゲームです。

ゲームで使用されるカードは3色、各1~16まで存在する「数字カード」と1枚だけある「秘密兵器カード」という特殊札を加えた全49枚を用います。

基本的なルールはマストフォローあり、切り札無しのシンプルなトリックテイキング。

しいて特徴を挙げるなら、トランプで遊ばれるようなトリックテイキングと比べて1スートが長いのと、切り札無しという性質から、期せずして勝つ、負けるというのは起こりにくい印象です。

強いカードはきちんと勝つ(勝ってしまう)し、弱いカードで勝つのは困難です。

 

 

2.ラウンドの進行

ゲームはラウンドという単位で進行します。

ラウンド終了時に誰かが定められた点数を取っていればそこでゲーム終了、そうでなければラウンドを繰り返す……と、これもまたオーソドックスな流れ。

 

ラウンドは次の5つのフェイズで構成されています。

①準備フェイズ

②貿易フェイズ

③公約フェイズ

④会議フェイズ

⑤決算フェイズ

なんだか難しそうですが、実際のルールはシンプルなので安心してください。

では実際にラウンドがどのように進行していくのかを簡単に見ていきましょう。

 

①準備フェイズ

このフェイズで行うのは「カードの分配」です。

数字カード48枚をよく混ぜ、全てのプレイヤーに13枚ずつ配ります。

余った9枚のカードは全て見えるよう表向きにしてテーブルの上に並べます。

このテーブルの上に表向きに置かれたカードは『場札』と呼ばれ、後のゲームにおいても非常に重要なものになってきます。

 

②貿易フェイズ

このフェイズで行うのは「カードの交換」です。

マリガンや引き直しといったものを想像して貰った方が分かりやすいかもしれません。

 

スタートプレイヤーから順に、望むなら「カードの交換」を1回だけ行います。

「カードの交換」を行うなら、自分の手札から1枚選び、場札に加え……

その後、場札から1枚選び、自分の手札に加えます。

 

これを1手番ずつ行ったなら、脇に避けておいた「秘密兵器カード」を場札に加え……

貿易フェイズは終了になります。

 

③公約フェイズ

このフェイズでは「このラウンドでいくつトリックを取るかの予想」を行います。

宣言した数字と実際の勝利数を一致させることで点数が貰える、いわゆる「ビッド」と呼ばれるシステムですね。

 

公約フェイズではスタートプレイヤーから順に数字を宣言し、その数字を忘れないようにメモをしておきます。これで公約フェイズは終了になります。

 

 

④会議フェイズ

さあ次に行う会議フェイズでは実際に「トリックテイキング」を行います。

さっきも述べた通り、マストフォロー・切り札無しのルールで進行し、全員の手札が無くなるまで、つまり必ず13回トリックを行います。

それが終了した時点で、次の決算フェイズに入ります。

 

⑤決算フェイズ

決算フェイズで行うのは「得点の計算」です。

今回トリックに何勝したのかに応じて、得点を得られます。

先ほども述べた通り、この時に誰か一人でも累計得点が30点を超えていればゲームは終了し、得点の一番高い人が勝利。そうでなければラウンドを繰り返すという流れ。

 

 

3.ゲームの特徴

と、ここまでだと「カードの交換」などの要素はありながらも、ビッドを取り入れたよくあるトリテのように見えます。

では次にこのゲームの特徴、いわゆるセールスポイントを

①得点計算   ②交渉  ③NPC

の3要素に絞って解説していこうと思います。

 

①得点計算

トリテにおいてどのように点数を得るのか、というのはそれだけでどんなゲームか説明してしまえるほど非常に重要な要素と言えるでしょう。

コンクルージョン』ではビッドの要素があり、実際にそれを的中させることで点数を得ることが出来ますが、実はそこで得られる点数は微々たるものです。

それどころか、ぴったり一致させなくても、宣言した数の+-1でも点数が入るとため、コンクルージョン』におけるビッドは非常に緩く、重要度は低めです。

 

 

ではどのように点数を得るのか。

コンクルージョン』にて最も効率よく点数を得る方法は「他のプレイヤー1人と勝利したトリック数を揃えること」です。

これを達成することで大きくボーナス点を得ることが出来るため、基本的にプレイヤーはこれを目指していくことになります。

 

「他人と勝利数を揃える」、これはシンプルながらジレンマを生みます。

自分だけがトリックを勝ちすぎてもいけない。

反対に自分だけがトリックに負けすぎても駄目。

状況に合わせた立ち回りが求められます。

ですがこれは手札の強弱がどうであれ、立ち回り次第で点数を取ることが出来る事を示しています。あなたがどんな手札でも抗うチャンスは残っているのです。

 

②交渉

点数獲得の為に活用すべきが2つ目の「交渉」という要素です。

実はこのゲーム、いつでもプレイヤー同士で「交渉」を行ってもよい、というルールがあります。交渉と言っても手札の交換や公開、点数のやり取りといったことは出来ませんが、話す内容についての縛りは特にありません。

「自分の手札が強い・弱い」「一緒に〇〇点取る事を目指そう」「〇色のカードでリードして欲しい」など自由に交渉によって話し合うことが出来ます。

上記のボーナス点は自分一人だけでは得ることが出来ません。

交渉によってプレイヤー同士の足並みを揃えることは必要不可欠です。

ただし交渉での約束に拘束力は無く、嘘を吐くことも可能なため、相手の事を信じすぎてしまうのも危険かもしれません……

 

NPC

そして3つ目の重要な要素が「小国連合」と呼ばれるNPCの存在です。

 

ラウンド開始時点ではプレイヤー3人だけでトリックテイキングを行います。

しかし誰かが最初にトリックに3回勝利すると、そこから先のトリックに「小国連合」という第4陣営が参加してきます。

「小国連合」はいわゆるNPCであり、4人目のプレイヤーのような存在です。

「小国連合」は自分の手番になると、プレイヤーと同じようにカードをプレイします。しかし「小国連合」には手札が存在せず、場札からプレイするカードを選びます。

 

この時、ポイントになのが「小国連合」がプレイするカードを選ぶのは、このラウンドで一番最初にトリックを3回勝利したプレイヤーだという点です。

つまりラウンドの序盤に3回勝利すれば、NPCのコントロールを得ることが出来るため、そのラウンドの展開をある程度操る事が出来るでしょう。

しかし「他人と勝利数を揃える」ことを狙う上で序盤に勝ちすぎてしまうのは、あまり良い選択ではありません。というのも勝てば勝つほど他人と勝利数を揃えるのは困難になるからです。

プレイヤーは勝利数を抑えて様子を見るか、トリックに勝利して「小国連合」を味方につけるか、この序盤の選択は非常に悩ましいものになるでしょう。

 

他にもこのNPCの存在は、NPCと勝利数を揃えて自分だけボーナス点を得る、カード交換がマリガンだけでなくNPCが出せるカードを操作するために行う、など様々な戦略を生み出してくれます。

 

4.どんな人にオススメか?

コンクルージョン』には特殊札がほとんど存在せず、切り札が無いことから予想外のことが起こりにくく、トリックに勝つか負けるかの予想は比較的容易です。

逆に特殊札や切り札で誤魔化しが効かないため、自分がどうやって得点を得るのかをしっかりと考えなければ勝利するのは難しいでしょう。

また自分のミスが相手の点数を大きく伸ばしてしまう可能性もあります。

 

これらの面から総合して『コンクルージョン』はシビアなゲームです。

そういったじっくりと考えるようなトリックテイキングが好みの方にはオススメです。

 

逆にゲーム展開に派手さは無く、かなり地味なゲームだとも言えます。

また革新的なアイデアを中心に据えたゲームでもないため、同人ゲームに斬新さや新鮮さを求めるような人にとっては物足りないかもしれません。

加えてトリックテイキングをほとんどやったことない方には少し難しく感じるかもしれません。

 

5.まとめ

以上で『コンクルージョン』の紹介を終わります。

 

この記事で少しでも興味を持ってくれた方は、是非とも「ボードゲーム大祭」にて買ってみてください。値段もかなりお求めやすいものになっています。

コンクルージョン』は9月3・4日の「ボードゲーム大祭」の【さくらの間-40『輪骨舎』】ブースにて発売予定です。価格は1000円です。

 

 

6.おまけ:『コルージョン』と『コンクルージョン

コンクルージョン』はトランプで遊べる『コルージョン』というトリックテイキングをベースに作られています。(タイトルもそれを意識したものになっています)

『コルージョン』は古いゲームでありながらも大変面白く、『コンクルージョン』の交渉や得点要素はほとんどそれと同じものになっています。

僕はこの『コルージョン』というトリテが好きなのですが、4人専用という部分がネックであまり遊ぶ機会が多くはありませんでした。今回『コンクルージョン』というゲームを作ろうと思ったのも3人で『コルージョン』の面白さを味わえるゲームが欲しいと思ったからです。

そして3人で遊べるようにルールを考えていく中で、元のゲームで自分が気になっていた「序盤で勝利することの価値の低さ」「序盤何を目安にプレイすればいいか分かりにくい」といった部分を、NPCやビッドという要素を取り入れることで改善しようとしています。

そのせいで元々のシンプルさが薄れてしまった部分はあるのですが、これはこれで違った面白さが味わえるゲームになっていると思います。『コルージョン』をプレイ済みの方はプレイ感の違いを比べてみるのも面白いでしょう。

 

そして『コルージョン』をプレイしたことない方は、一度そちらの方を遊んでみて購入するかどうか決めてもいいと思います。また『コンクルージョン』が面白かったなら、是非とも『コルージョン』もプレイしてみてください。とても良いゲームです。

【解脱RTA】発売前パーフェクト攻略ガイド【テーマ編】

こんにちは!

この記事はゲームマーケット2022春にて頒布される『解脱RTA』のテーマに関する紹介記事だ。

 

『解脱RTA』というゲームがどんなものなのか、大まかなゲームの流れ、テーマは以下の記事にて詳しく解説している。まだ読んでいない方は是非。

gamemarket.jp

 

こちらの記事はゲームシステムを深く掘り下げたものになっている。

記事の中では『解脱RTA』に最も影響を与えたゲームを取り上げ、それと対比する形でシステムを解説している。

megalomaniac-game.hateblo.jp

 

そして今回は【テーマ編】と題して、テーマの面から『解脱RTA』を掘り下げ、全3回の紹介記事の締めくくる。

前半部分ではボードゲームの楽しみ方についての持論を述べ、後半ではそれを踏まえて『解脱RTA』のテーマについての解説を行う。

出来るだけボードゲームのテーマに興味がない人でも楽しめるように書いたつもりだ。

 

 

そしてこれから話す一部の内容は人によっては当たり前のことかもしれない。

だが自分の考えを言語化するという意味で、一旦ここに書き記すことにする。

加えてこの記事で語られる内容はあくまで僕の考えであり、明確な根拠があるわけではない。間違ったことを述べている可能性は大いにある。

こういう考えもあるんだな、と言った感じで読んでくれるとありがたい。

 

【①ボードゲームの楽しみ方】

本題に入る前にひとつ前置きを置かせてほしい。

これを読んでいるあなたはボードゲームを遊ぶ時、どのような部分に目を向けて楽しんでいるだろうか?

 

ボードゲームの楽しみ方というのは多岐に渡る。

気の置ける仲間とプレイして楽しい時間を過ごすもよし。

システムに注目してゲームを深く分析してもいい。

そのゲームの世界観を入り込むという楽しみ方もあるだろう。

 

どのように楽しむかは人それぞれであるが、多くの人はゲーム部分に注目している

そのような人にとってはゲームの「テーマ」とは重要なものでなく、おまけのようなものとして捉えている人は多いのではなかろうか。

 

そこで提案したいのが次のような楽しみ方。

「コンセプトやテーマに注目して、言わばボードゲームをアートを見るかのように楽しむ」という方法だ。

 

 

順に解説しよう。

まず前提としてゲームとは何らかの事象を模倣したものである。

例えばワーカープレイスメントは毎日働く労働者の姿を端的に表現したものであるし、ウォーゲームでよく使われるダイスは戦闘の不確実性を表している。

ゲームという虚構の世界を尤もらしいものに見せるために、「テーマをシステムで言い換える」ということはあらゆるゲームで行われている。(ノンテーマのゲームを除く)

 

つまりボードゲームとはルールとコンポーネントを用いてテーマを表現したものと捉えることが出来る。この捉え方はアートを見る時の感覚に近い

現代アートにコンセプトやテーマがあって、それを様々な手法で表現するように。

ボードゲームにも少なからずそのような要素がある。

 

なので斬新なコンセプトやテーマを上手く表現した現代アートが評価されるように、テーマを上手くシステムに落とし込めてたりコンセプトそのものが良いボードゲームはそれだけで評価されるべきだと思う。

 

イメージしにくいと思うのでいくつか具体例を挙げよう。

例えばフリーゼの「504」

これは9つあるモジュールを組み合わせて504個のゲームが遊べるという触れ込みのゲームだ。残念なのはそのほとんどがゲーム的に見れば面白くないところだろう。

だが「モジュールを組み合わせて504個のゲームを遊べるようにする」という無理難題をフリーゼがどうやって成り立たせようとしたのか?という部分に注目すればとても面白いゲームである。

実際にルールを読んでみるとモジュールではない部分で最低限ゲームを成立させるためのルールがちゃんと用意してあったり、各モジュールは対象とするメカニクスを極限までにシンプルにしつつも幹となる要素はしっかり残したりと、デザイナーの工夫が至る所に見える。それを見るだけでもフリーゼと会話しているような気分になれる。

 

加えて「504」ではちゃんとルールの異なるゲームが504個遊べるようになっている。面白いかは別にして、それを成立させただけでも素晴らしいゲームだと感じる。

 

 

次に「京都議定書」というゲーム。2021年に日本語版が発売されている。

これは環境問題がテーマで、システムだけを見るとかなりベタな交渉を行うタイプのゲームだ。正直ゲームシステム面で特筆すべき点はない。

だがテーマに目を向ければ話は別だ。

京都議定書」の面白い点は環境問題というデリケートなテーマをゲームで扱おうとした部分にある。ゲームとは言わば自分の全ての行動が点数で判定され、明確に勝敗がある非常に冷酷でシビアな世界だ。

このゲームという尺度を用いて環境問題を取り扱うことで、それを遊ぶプレイヤーは非常にシビアな目線で環境問題を見ることになる。

この一連の体験は面白く、なおかつゲームならではのものだと感じた。

 

 

『504』と『京都議定書』は正直ゲームとしてどちらもそこまで面白くはない。

だが先に述べた「コンセプトやテーマに注目して、言わばボードゲームをアートを見るかのように楽しむ」という手法ならこれら2つも面白いゲームだと評価することが出来る。

ボードゲームの評価軸は1つではない。

様々な角度で楽しめるのもボードゲームの魅力だと言えるだろう。

 

 

【②解脱RTAのテーマと火の鳥

僕は全ての人間が上記のようにボードゲームを楽しむべきと言いたいわけじゃない。

ボードゲームにはそういった楽しみ方もあると伝えたいだけだ。

 

ただ自分がそういった楽しみ方をする人間だからこそ、今回同人ゲームを作る際に「テーマ」の部分だけでも楽しめる作品にしようと最初に決めていた。

ノンテーマではなく、作品の中心に強いテーマを据えて、かつそれがシステムと上手く絡み合っているような作品が理想だった。

 

ひとまず大まかなシステムを決めて、それに合うテーマが無いかと探していた時、僕は1つの漫画に思い当たった。

その漫画とは、手塚治虫の『火の鳥』である。

火の鳥』はその血を飲むと不老不死になれるという鳥とそれに関わる人間を描いた作品だ。たぶん日本国民全員が読んでいるので、わざわざ解説する必要もないだろう。

僕が『火の鳥』を始めて読んだのは小学校の図書館で、壮大なスケールの物語に僕は何だか恐ろしくなり、夜中に布団でガタガタ震える日々を過ごすことになった。

幼い頃の僕にはそれほどまでに衝撃的な作品であった。

それ以来何度も読み返している。僕の大好きな作品の一つである。

 

火の鳥』のストーリーは仏教が根底にあり、「輪廻」という概念が度々登場する。

僕はこの「輪廻」という概念が、ゲーム中に陣営を変更するというシステムにとてもマッチしているのではないかと考えた。

加えて火の鳥恐ろしく残酷で無常な世界観は、戦争や命が勝利点や駒といったもので置き換えられるゲームの性質とも相性がいい。

そして好きな作品を自分のゲームに落とし込むというのは「オタクが作品を作るならやりたいことトップ10」に入るくらい魅力的なことだ。

そういった理由があって僕は火の鳥をベースにテーマを作ることにした。

 

それが『解脱RTA』の「果てしない戦争が続く世界の中で輪廻転生を繰り返し、唯一の脱出方法である解脱を目指す」という世界観に繋がっている。

このテーマには幼い時火の鳥』を読んだときに感じた「根源的な恐怖、命の儚さ、それでも生きていこうとする人間の美しさ」を詰め込んだつもりである。

 

 

【③テーマをシステムに落とし込む】

そして『解脱RTA』のシステムにもテーマは大きく関係している。

今作ではテーマから着想を得て作られたシステムが多く存在しているからだ。

これによりプレイ中に世界観や情景をイメージしやすくなっているはずだ。

 

ここで「このシステムは〇〇を意味しているんだ!」と語ることも出来るが、自分でそれを解説するというのもあんまりクールではないのでやめておく。(今更感はある)

 

だが今回は紹介記事という名目なので、いくつかの部分だけを軽く紹介する。

 

 

ゲーム中にはいくつかのアクションが登場する。

これは戦場マスに書かれたイベントマスや「御利益チップ」で使用できるものになる。

これら全てには「名称」が付いており、効果もその名前から受け取るイメージに応じたものになっている。これは情景をイメージしやすくなるのと同時に、アクションの効果が覚えやすくなるという機能を狙ったものだ。

(それぞれのアクションには名称とそれをモチーフにした効果がある)

 

 

他にも戦場カードの処理。

得点源となる戦場カードは全部で6枚存在し、ゲームでは常に1枚以上が休戦中という扱いで裏向きになっている。決算が発生すると今まで裏向きだったカードが表になり、決算を行った戦場カードは裏向きになる。

このようなループ構造を取っているのはコンポーネントを節約するという側面もあるが、果てしなく続く戦争を表したものにもなっている。

それぞれの陣営は栄誉の為に戦いを続け、一時は勝利を収めることもあるが、時間が経てばその痕跡はすべて消えて新たな戦争が始まる。

これは『解脱RTA』が戦争に参加する人間にスポットを当てた作品であり、陣営同士の争い自体はゲーム的に無為なものであることを示している。

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(ゲーム中、戦場は戦争と平和を無限に繰り返す)

 

 

他にも『解脱RTA』には「テーマをシステムで言い換えている」部分がいくつも存在する。「テーマ」の部分だけでも楽しめる作品になったと思う。

あとは実際にプレイする中で情景をイメージして楽しんで欲しい。

 

 

【④まとめ】

ボードゲームはいろんな方法で楽しむことが出来る。

・その中にはテーマやコンセプトに注目して楽しむという方法もある。

・『解脱RTA』の世界観は『火の鳥』に大きく影響を受けている。

・今作はテーマをベースにして色んなシステムを構築している。

 

 

これで全3回に亘った【解脱RTA】発売前パーフェクト攻略ガイドは終了である。

ここまで読んでくれたあなたには最大限の感謝を伝えたい。

 

 

 

今回の記事ではテーマの部分に焦点を当てて『解脱RTA』を掘り下げたが、テーマに興味が無ければ今作を楽しめないわけではない。

普通にテーマを考慮せずにただのゲームとして遊んでもきちんと面白いゲームに仕上がっていると僕は思っている。

 

重ね重ね言うが、ボードゲームは様々な角度で楽しむことが出来るのだ。

そして『解脱RTA』も色々な楽しみ方が出来る作品になるように製作したつもりだ。

システムに目を向けて、ゲームとして普通に遊んで楽しむもよし。

テーマに目を向けて、世界観がシステムにどう影響を与えているかを考えるのもよし。

制作者に目を向けて、ゲームを深く分析して楽しむのもいいだろう。

そういった様々な形で楽しんで欲しいから、僕はこんな紹介記事を書いているのだ。

 

このゲームを知ってくれたあなたが、どんな形であれゲームを楽しんでくれたなら僕にはとても嬉しく思う。

 

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『解脱RTA』はゲームマーケット2022春にて頒布されるボードゲームだ。

予価は2000円。頒布はア26『サイシュピール』ブース内に執り行う。

出展日は4/23(土)のみ。日曜日の出展は無いので注意して欲しい。

 

 

ここまで読んでくれてありがとう!

次はゲームマーケット会場にてお会いしましょう!

【解脱RTA】発売前パーフェクト攻略ガイド【システム編】

こんにちは!

この記事はゲームマーケット2022春にて頒布される新作ボードゲーム『解脱RTAのゲームシステムに関する紹介記事だ。

 

『解脱RTA』というゲームがどんなものなのか、大まかなゲームの流れ、テーマは以下の記事にて詳しく解説している。まだ読んでいない方は是非。

gamemarket.jp

 

こちらではゲームの説明書を読むことが出来る。

先に読んでおくと、この記事の内容が理解しやすいのでお勧めだ。

gamemarket.jp

 

今回は前の記事より一歩進み、ゲームシステムや設計思想といった部分を深く掘り下げていく。総じてオタクっぽい話であり、ゲームシステムそのものに興味が無ければ、退屈なものになる可能性は高い。

『解脱RTA』がどんなゲームか知りたいだけなら上記の記事で十分にカバーできる。

しかしもしあなたが自分の事をボードゲームのシステムが気になって堪らない面倒くさいオタクだと自負しているならこの記事も楽しめるかもしれない。

 

 

 

さて前置きはこのくらいにしてさっさと本題に入ろう。

 

【①前提:解脱RTAは何を目指して作られたゲームか?】

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まず初めに、『解脱RTA』は「30分くらいで終わる小箱ゲーム、それでいて多人数マルチゲームの面白さを味わえるゲーム」を目指して作られている。

 

始めの「30分くらいで終わる小箱ゲーム」の部分は主に制作の問題だ。

金銭面や調整時間を考えるとコンポーネントが膨らみがちな重量級は作れない。

知名度もない身としては興味の抱いた方が手に取りやすい価格帯が良いだろうと考えて決めたことだった。

 

そして後者の「多人数マルチゲームの面白さを味わえるゲーム」というところ。

これは以前の記事で述べたように僕の趣味嗜好が反映された部分になる。

僕が愛してやまない「多人数マルチ」と呼ばれるタイプのゲームはどいつもこいつもべらぼうにプレイ時間が長い。2時間を超えるなんてのは当たり前だ。

それでいて基本的に多人数で遊ぶゲームだから人数が沢山いる。

ルール量もそれなりに多い。そして何と言っても人を選ぶ。

 

好き嫌いが別れそうなゲームに2時間以上付き合ってくれる人間を何人も集めろというのは非常に困難なミッションで、現代日本で遊ぶには難易度が高い。

 

だからこそ僕はルール量やプレイ時間は抑えつつもこの「マルチ」の面白さが味わえるゲームをあったらなぁと思っていた。

だから今回そんなゲームを自分で作ることにした。極めて単純な行動原理である。

 

 

そんなわけで「マルチの面白さを味わえる30分ゲーム」を目標として作られた今作。

そのゲームシステムを作り上げるために他のボードゲームをいろいろ参考にしている。その中でも特に参考にしたボードゲームを2つ紹介する。

 

 

【②『ブリッツクリーク!(Blitzkrieg!)』】

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解脱RTAを製作する上で一番参考になったのは、この「ブリッツクリーク!」だ。

これは二人専用のボードゲームであり、「20分で第二次世界大戦が味わえる」という触れこみの対戦ゲームだ。日本でも数寄ゲームズが和訳付き輸入盤を販売している。

 

『ブリッツクリーク!』でやることは非常に簡単だ。

プレイヤーは手番ごとに「ユニット」と呼ばれる数字の書かれたチップをいずれかのマスに配置する。その結果、マスの効果や決算が発生したりする。

細かい部分はあれど基本のルールはこれだけ。驚くほどシンプルだ。

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『ブリッツクリーク!』の最大の魅力はこれだけシンプルなルールでありながら驚くほど悩ましいゲームに仕上がっている点にある。

いや、むしろシンプルであるがゆえに作者がどの部分で悩んで欲しいと思っているかがダイレクトに伝わってくる。本当に素晴らしいゲームだ。

僕が『ブリッツクリーク!』をプレイしたのはちょうど「30分で遊べるマルチ」のシステムを考えている時で、このシンプルでありながら悩ましいルールは非常に魅力的に思えた。

そういった経緯があり『解脱RTA』のシステムにはこのゲームの影響が多々見られる。そこでこの2つのゲームの類似点をいくつか上げて『解脱RTA』のシステムを解説していくことにしよう。

 

『ブリッツクリーク!』において重要なのは数字の書かれたチップとそれを配置するマスだ。チップは毎ターンバッグから1枚ドローする形で若干の引き運が絡む。

そしてそれをマスに配置するのだが、そこには多くの場合はアイコンが書いてある。配置ボーナスとしてアイコンに対応したアクションを行えるという形だ。

ここで素晴らしいのはこのマスに書かれた配置ボーナスが非常に強力な点にある。

チップの数字は引きの要素が絡むので一見運が勝敗を左右するように見えるが、このマスの効果が強力なため、チップの数字の大きさよりどのマスに配置するかの方が重要になるからだ。このためドローという要素がありながら、しっかりとした戦略性を成り立たせている。

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(配置ボーナスはいずれも強力。全てアイコン化されているのも素晴らしい)

 

この部分は「解脱RTA」においても継承されている。

「解脱RTA」でも使用される活力チップには引き運が絡むので状況によっては有利不利が強く出る。だが「ブリッツクリーク!」と同様に勝負の肝になるのはどこにチップを配置するか、いつ決算を起こすのかという部分だ。

加えて「解脱RTA」は転生というシステムで陣営すら変更出来てしまう。

このように運の要素が無いわけではないが、それを和らげるシステムがいくつもある。

そのため運が勝敗に直結するということはあまり起きないようになっているのである。

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(戦場カードに書かれたイベントマス。どれもかなり強力なものが多い)

 

さあ、話しを一旦「ブリッツクリーク!」に戻そう。

このゲームが優れている点はいくつもあるがそのうちの一つは「決算」のシステムだ。

「ブリッツクリーク!」を始めとするエリアマジョリティと呼ばれるゲームに共通することとして、基本的に「決算」と言われるアクションは強力なものになっている。

これは数の比べ合いという勝負において「後置き」という行為がそもそも強力だからだ。しかしあまりに強力すぎるアクションの存在はプレイヤーの思考停止を招く。

「ブリッツクリーク!」ではこれを防ぐためか、決算を起こす行動に一定のリスクを与えている。具体的には決算を発生させると一旦点数が入るが、その代わりチップを配置できる場所が一気に増える。先程も述べた通り、このマスの効果はかなり強力なため、次のプレイヤーはある程度アドバンテージを得ることが出来る。

勿論決算というアクション自体は「ブリッツクリーク!」においても強力なものだが、このルールのおかげである程度リスクのある行動になっており悩ましさが増している。

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(一つの段が全て埋まると決算が発生。その後、下の段にも置けるようになる)

 

これを踏まえて「解脱RTA」のシステムを見てみよう。

「解脱RTA」でチップを配置するのは6枚の戦場カードと呼ばれるカードだ。

この戦場カードは常に1枚が裏返り「休戦中」という状態になっている。

「休戦中」の戦場カードにはチップを配置することが出来ないため、基本的にプレイヤーは5つの戦場からチップを配置する場所を選ぶことになる。

重要なのは決算が終了すると今処理した戦場は「休戦中」になり、今まで「休戦中」だった戦場が表にひっくり返り新しい戦場になる。

このため次のプレイヤーはここにチップを配置することが可能だ。

そして全ての戦場に共通しているのは一番初めのイベントマス(つまり一番最初に戦場にチップを配置したプレイヤーが貰えるボーナス)は非常に強力なものになっていることだ。このため「ブリッツクリーク!」と同じく決算を発生させること自体にリスクがある。加えて「解脱RTA」は特定のプレイヤーの邪魔をすることが可能なので、目立ちすぎることは不利益に繋がることもある。

このように「ブリッツクリーク!」の悩ましい要素はきちんと引き継がれている。

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(どの戦場カードも1マス目には共通して「善行」のアクションが行える。

 これはゲームを通して最も強力な効果になっている)

 

 

と、ここまで読んできた方は1つの疑問に思うかもしれない。

それは「参考にしているというけど、それってパクってるだけじゃないの?」という疑問だ。

だがこの問には明確にNOと言える。

「解脱RTA」が「ブリッツクリーク!」のシステムをベースにしているのは事実だが、きちんと独自の要素があるからだ。

 

一つ例を挙げよう。例えばドローのシステム。

「ブリッツクリーク!」では手番終了時に毎回1枚ドローするというシステムを取っていた。この手法はベタであるが、毎回バッグからドローするというのは少し煩わしさを感じる部分があった。

これを解消するため「解脱RTA」は毎手番ドローすることはない。

チップは少しずつ減っていき、0枚になるとまとめて引くという処理が入る。

加えてこの部分に「死亡」や「転生」というフレーバーが合わさることで、これだけの違いでも実際のプレイ感はかなり異なるものになっている。

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そして一番大きな違いは「ブリッツクリーク!」は2人専用ゲームであり、「解脱RTA」は3~4人用ゲームだという点だ。

そもそも2人専用ゲームは他のプレイ人数のゲームと大きく異なる。

例えば相手の妨害が直接自分の利益に繋がること。

相手の点数を減らすことは自分の点数を伸ばすことと同じ意味を持つ。

これは2人専用ゲームならではの性質だ。

であるから「ブリッツクリーク!」のシステムを3~4人用の「解脱RTA」にそのまま持ってくることは不可能であるし、もし行ったとしても完成度高いものにはならないだろう。そのことは十分把握している。

だからこそ「解脱RTA」が参考にしているのはあくまで「ブリッツクリーク!」のゲーム進行の部分に留めている。プレイヤー同士の駆け引き、つまりゲーム性の部分では同時の調整を加え差別化を図っている。これは後の話とも繋がる部分でもある。

 

 

さあ、ここまでの話を一旦まとめる。

「解脱RTA」のベースになっているのは「ブリッツクリーク!」という二人用ゲームだ。基本的なゲームの進行はこれに準じたものになっている。

しかし只の模倣ではなく、それを多人数ゲームに落とし込むために独自の調整が施されており、それが「ブリッツクリーク!」との大きな差別点になっている。

 

 

では次は「解脱RTA」制作において参考にしたもう1つのゲームを見ていこう。

これを知ればどの部分で差別化を図っているかも見えてくるはずだ。

 

【③『パックス・パミール』『インペリアル』~陣営のグラデーション~】

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「解脱RTA」制作において参考にしたもう一つのゲームとは『パックス・パミール』及び『インペリアル』といった一部の多人数マルチゲームである。

一番初めに述べた通り、「解脱RTA」は「30分でマルチの面白さを味わえるゲーム」を目指している。であるならこれらのゲームを参考にするのは真っ当な話だ。

 

 

だが数多く存在するマルチの中でなぜこの2つなのか。

それはこの2つのゲームにある共通点が強く関係している。

 

『パックス・パミール』は19世紀の混乱するアフガニスタンを舞台にした重量級ゲームだ。プレイヤーは部族という立場でイギリス・ロシア・アフガニスタンの3国のいずれかと同盟を結びながら覇権を争う。

 

対して『インペリアル』は第一次世界大戦を舞台にした重量級ゲームだ。

プレイヤーは投資家となって各国に支援を行いながら戦争の行く末を影から操り、自分の利益が最大になるように行動しなくてはならない。

 

この2つのゲームに共通しているのはプレイヤーがそれぞれの国を担当するのではなく、それと協力関係を結ぶ部族や投資家という立ち位置にあることだ。

つまりプレイヤーが直接特定の陣営を担当するわけではない。

これは仮想のプレイヤー(この場合だと国家)がゲームしているのを見て、どれが勝つかBETするような形だというのがわかりやすいだろう。

このような2段階構造はマルチの他にも株を扱うゲームによく見られたりする。

このシステムにはどのようなメリットがあるのだろうか?

 

それを説明するために一般的なマルチゲームを例に出そう。

よく知られる「ディプロマシー」などではプレイヤーと陣営が結びついている。

Aはイギリスを担当、Bはドイツを担当といったような形式だ。

これは直感的でわかりやすいものだが、その分プレイヤー同士の対立は過激だ。他のプレイヤーは明確に敵であり、一時的に手を組むことはあるだろうが、最終的にはつぶし合う運命にある。

自分の担当する陣営が劣勢すぎるとゲームの途中で勝ち目がないことがわかってしまうという事態を招く可能性もある。総じて陣営が明確なせいか他プレイヤーと協力するか、敵対するかをハッキリと決めなくてはならない場合が多い。

 

ではそれに対して「パックスパミール」「インペリアル」のシステムはどうか。

プレイヤーを陣営と紐づけず、それを支援する立場に置くというシステムはプレイヤーの立場を曖昧なものにする。

プレイヤーは複数の陣営を同時に支援することが出来るし、それによってプレイヤー同士の関係にグラデーションが出来上がる。

プレイヤー同士は完全に味方や敵といった状態になることは無く、ある時は協力しある時は敵対するという曖昧な関係の中で己の利益を追い求めなくてはならない。

このシステムの優れている点は他者に攻撃されるというストレスをある程度軽減しているところにある。自分の支援している陣営が攻撃されれば確かに劣勢に追い込まれるが、「ディプロマシー」ほど致命的というわけでもない。

プレイヤーの立場を曖昧にすることでプレイヤー同士のインタラクションを直接的なものから間接的なものに落とし込むことに成功している。

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(パックスパミールにおいてはダイアルと忠誠度、インペリアルは株券によって協力関係を示している)

 

ただこのシステムにも欠点はある。

例えばこれは直感的ではなくゲームが複雑になりやすい。プレイヤーの立場が曖昧になることで自由度が増している一方で、複雑さは増し長考を招きやすい。

その結果「よく分からないままゲームが終わってしまった」という人も良く見る。

 

プレイヤーに優しくない点は明確な欠点ではあるが、それを差し引いてもやはり魅力的なシステムだと僕は思う。

なので「解脱RTA」でもこのシステムを参考にし、うまく協力関係のグラデーションを作ろうと試みている。その肝となるのが「転生」という要素だ。

ゲーム中プレイヤーは所持するチップを置いていくが、先ほども述べた通り毎ターンドローすることは無い。0になったタイミングで補充が入るが、この時必ず陣営が変更される。これは任意ではなく強制だ。

陣営の変更という要素はプレイヤーが今の戦場カードの状況、他のプレイヤーの陣営へ目を向けることを促している。加えてプレイヤーがどういった順番で「転生」していくかは事前に決められている。プレイヤーが自由に「転生」先の陣営を選ぶことは出来ないのだ。

これにより「赤の陣営には次に「死亡」すればなれるが、緑の陣営になるのはまだまだ先だからこの戦場の決算は早めに発生させよう」といったような駆け引きが生まれる。

これもプレイヤー同士に協力、敵対を促す仕掛けのひとつだ。

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(ゲームで重要な要素である陣営カードと転生。

 それぞれのプレイヤーで転生する陣営の順番が異なるのも重要なポイントだ)

 

 

ただあくまで「解脱RTA」は30分で終了する中量級ゲームなので、「パックスパミール」や「インペリアル」ほど濃密なインタラクションがあるわけでない。

だが簡略化されつつも、その面白さの骨子はしっかり味わえるものになっていると思う。是非とも実際にプレイしてみて、その要素を感じ取って欲しい。

 

 

【まとめ】

「解脱RTA「30分で多人数マルチの面白さを味わえるゲーム」を目指している。

・制作する上で参考にしたゲームは「ブリッツクリーク!」「パックスパミール」「インペリアル」

・「ブリッツクリーク!」からは主にゲームの進行に関わる部分を。

・「パックスパミール」「インペリアル」からは陣営の2段階構造を。

・それらのゲームを参考にしながら独自のシステムに落とし込んでいる。

 

この他にもシステムで言及したい部分はあるが、長くなってしまったので今回はここまでにする。あとは実際に遊んでみて、自分の目で判断して欲しい。

『解脱RTA』はもしかしたらとんでもないクソゲーかもしれないが(少なくとも僕は面白いゲームだと思っているが!)それでも僕の全力を注ぎこんだゲームである。

プレイした後にこの記事を見返して、作者の試みが成功しているかを分析するのも面白いものだ。もし盛大に滑っていたらバチボコに批判するという楽しみ方もある。

それも全て購入者に許された特権だ。

どんな形であれ、このゲームを楽しんでもらえれば幸いである。

 

まあつまらない話はこのくらいにしてこの記事を締めることにしよう。

 

『解脱RTA』はゲームマーケット2022春にて頒布されるボードゲームだ。

予価は2000円。頒布はア26『サイシュピール』ブース内に執り行う。

出展日は4/23(土)のみ。日曜日の出展は無いので注意して欲しい。

 

確実に手に入れたいのならこちらの取り置き予約フォームがオススメだ。

docs.google.com

 

 

そしてここまで読んでくれてありがとう。

次回は【解脱RTA】発売前パーフェクト攻略ガイド【テーマ編】でお会いましょう。

 

 

 

 

 

パーティ太郎が作ったもの

 

今まで作った作品や書いたものをまとめています。

 

①七つの死体と一人の男

2人用のマーダーミステリーです。

1時間程度で終わり、また無料なので手軽に遊ぶことが出来ます。

詳しいことはリンク先参照です!

note.com

 

②超能力者バトルロワイヤル

ゲームマーケット2021秋にて販売した5人用マーダーミステリーです。

GMレスのオフライン専用シナリオ。

プレイヤーは「自称超能力者」になって舌戦を繰り広げます。

現在在庫がなく、入手方法がありません……

再販したら情報更新します。

 

 

③解脱RTA

ゲームマーケット2022春にて販売した3~4人用ボードゲームです。

30分で終わる小箱ゲームながら、強いインタラクションが楽しめるマルチゲームです。

詳しい解説は以下の紹介記事をご覧ください。

gamemarket.jp

 

コンクルージョン

ボードゲーム大祭2022にて販売された3人専用トリックテイキングゲームです。

トランプで遊べる「コルージョン」をアレンジした作品になっています。

詳しい解説は以下の紹介記事をご覧ください

megalomaniac-game.hateblo.jp

 

パチスロシミュレーター

ゲームマーケット2022秋にて販売した2~5人用のボードゲームです。

パチスロがテーマのリアルタイム推理ゲームになっています。

詳しいゲーム内容は以下の紹介記事をご覧ください。

gamemarket.jp

 

ボードゲームのレビュー

ボドゲーマにボードゲームのレビューを書いたりしてます。

数は少ないですが、興味あれば是非読んでみてください。

bodoge.hoobby.net

 

現在はここまで。