こんにちは!
この記事はゲームマーケット2022春にて頒布される『解脱RTA』のテーマに関する紹介記事だ。
『解脱RTA』というゲームがどんなものなのか、大まかなゲームの流れ、テーマは以下の記事にて詳しく解説している。まだ読んでいない方は是非。
こちらの記事はゲームシステムを深く掘り下げたものになっている。
記事の中では『解脱RTA』に最も影響を与えたゲームを取り上げ、それと対比する形でシステムを解説している。
そして今回は【テーマ編】と題して、テーマの面から『解脱RTA』を掘り下げ、全3回の紹介記事の締めくくる。
前半部分ではボードゲームの楽しみ方についての持論を述べ、後半ではそれを踏まえて『解脱RTA』のテーマについての解説を行う。
出来るだけボードゲームのテーマに興味がない人でも楽しめるように書いたつもりだ。
そしてこれから話す一部の内容は人によっては当たり前のことかもしれない。
だが自分の考えを言語化するという意味で、一旦ここに書き記すことにする。
加えてこの記事で語られる内容はあくまで僕の考えであり、明確な根拠があるわけではない。間違ったことを述べている可能性は大いにある。
こういう考えもあるんだな、と言った感じで読んでくれるとありがたい。
【①ボードゲームの楽しみ方】
本題に入る前にひとつ前置きを置かせてほしい。
これを読んでいるあなたはボードゲームを遊ぶ時、どのような部分に目を向けて楽しんでいるだろうか?
ボードゲームの楽しみ方というのは多岐に渡る。
気の置ける仲間とプレイして楽しい時間を過ごすもよし。
システムに注目してゲームを深く分析してもいい。
そのゲームの世界観を入り込むという楽しみ方もあるだろう。
どのように楽しむかは人それぞれであるが、多くの人はゲーム部分に注目している。
そのような人にとってはゲームの「テーマ」とは重要なものでなく、おまけのようなものとして捉えている人は多いのではなかろうか。
そこで提案したいのが次のような楽しみ方。
「コンセプトやテーマに注目して、言わばボードゲームをアートを見るかのように楽しむ」という方法だ。
順に解説しよう。
まず前提としてゲームとは何らかの事象を模倣したものである。
例えばワーカープレイスメントは毎日働く労働者の姿を端的に表現したものであるし、ウォーゲームでよく使われるダイスは戦闘の不確実性を表している。
ゲームという虚構の世界を尤もらしいものに見せるために、「テーマをシステムで言い換える」ということはあらゆるゲームで行われている。(ノンテーマのゲームを除く)
つまりボードゲームとはルールとコンポーネントを用いてテーマを表現したものと捉えることが出来る。この捉え方はアートを見る時の感覚に近い。
現代アートにコンセプトやテーマがあって、それを様々な手法で表現するように。
ボードゲームにも少なからずそのような要素がある。
なので斬新なコンセプトやテーマを上手く表現した現代アートが評価されるように、テーマを上手くシステムに落とし込めてたりコンセプトそのものが良いボードゲームはそれだけで評価されるべきだと思う。
イメージしにくいと思うのでいくつか具体例を挙げよう。
例えばフリーゼの「504」
これは9つあるモジュールを組み合わせて504個のゲームが遊べるという触れ込みのゲームだ。残念なのはそのほとんどがゲーム的に見れば面白くないところだろう。
だが「モジュールを組み合わせて504個のゲームを遊べるようにする」という無理難題をフリーゼがどうやって成り立たせようとしたのか?という部分に注目すればとても面白いゲームである。
実際にルールを読んでみるとモジュールではない部分で最低限ゲームを成立させるためのルールがちゃんと用意してあったり、各モジュールは対象とするメカニクスを極限までにシンプルにしつつも幹となる要素はしっかり残したりと、デザイナーの工夫が至る所に見える。それを見るだけでもフリーゼと会話しているような気分になれる。
加えて「504」ではちゃんとルールの異なるゲームが504個遊べるようになっている。面白いかは別にして、それを成立させただけでも素晴らしいゲームだと感じる。
次に「京都議定書」というゲーム。2021年に日本語版が発売されている。
これは環境問題がテーマで、システムだけを見るとかなりベタな交渉を行うタイプのゲームだ。正直ゲームシステム面で特筆すべき点はない。
だがテーマに目を向ければ話は別だ。
「京都議定書」の面白い点は環境問題というデリケートなテーマをゲームで扱おうとした部分にある。ゲームとは言わば自分の全ての行動が点数で判定され、明確に勝敗がある非常に冷酷でシビアな世界だ。
このゲームという尺度を用いて環境問題を取り扱うことで、それを遊ぶプレイヤーは非常にシビアな目線で環境問題を見ることになる。
この一連の体験は面白く、なおかつゲームならではのものだと感じた。
『504』と『京都議定書』は正直ゲームとしてどちらもそこまで面白くはない。
だが先に述べた「コンセプトやテーマに注目して、言わばボードゲームをアートを見るかのように楽しむ」という手法ならこれら2つも面白いゲームだと評価することが出来る。
ボードゲームの評価軸は1つではない。
様々な角度で楽しめるのもボードゲームの魅力だと言えるだろう。
僕は全ての人間が上記のようにボードゲームを楽しむべきと言いたいわけじゃない。
ボードゲームにはそういった楽しみ方もあると伝えたいだけだ。
ただ自分がそういった楽しみ方をする人間だからこそ、今回同人ゲームを作る際に「テーマ」の部分だけでも楽しめる作品にしようと最初に決めていた。
ノンテーマではなく、作品の中心に強いテーマを据えて、かつそれがシステムと上手く絡み合っているような作品が理想だった。
ひとまず大まかなシステムを決めて、それに合うテーマが無いかと探していた時、僕は1つの漫画に思い当たった。
『火の鳥』はその血を飲むと不老不死になれるという鳥とそれに関わる人間を描いた作品だ。たぶん日本国民全員が読んでいるので、わざわざ解説する必要もないだろう。
僕が『火の鳥』を始めて読んだのは小学校の図書館で、壮大なスケールの物語に僕は何だか恐ろしくなり、夜中に布団でガタガタ震える日々を過ごすことになった。
幼い頃の僕にはそれほどまでに衝撃的な作品であった。
それ以来何度も読み返している。僕の大好きな作品の一つである。
『火の鳥』のストーリーは仏教が根底にあり、「輪廻」という概念が度々登場する。
僕はこの「輪廻」という概念が、ゲーム中に陣営を変更するというシステムにとてもマッチしているのではないかと考えた。
加えて火の鳥の恐ろしく残酷で無常な世界観は、戦争や命が勝利点や駒といったもので置き換えられるゲームの性質とも相性がいい。
そして好きな作品を自分のゲームに落とし込むというのは「オタクが作品を作るならやりたいことトップ10」に入るくらい魅力的なことだ。
そういった理由があって僕は火の鳥をベースにテーマを作ることにした。
それが『解脱RTA』の「果てしない戦争が続く世界の中で輪廻転生を繰り返し、唯一の脱出方法である解脱を目指す」という世界観に繋がっている。
このテーマには幼い時『火の鳥』を読んだときに感じた「根源的な恐怖、命の儚さ、それでも生きていこうとする人間の美しさ」を詰め込んだつもりである。
【③テーマをシステムに落とし込む】
そして『解脱RTA』のシステムにもテーマは大きく関係している。
今作ではテーマから着想を得て作られたシステムが多く存在しているからだ。
これによりプレイ中に世界観や情景をイメージしやすくなっているはずだ。
ここで「このシステムは〇〇を意味しているんだ!」と語ることも出来るが、自分でそれを解説するというのもあんまりクールではないのでやめておく。(今更感はある)
だが今回は紹介記事という名目なので、いくつかの部分だけを軽く紹介する。
ゲーム中にはいくつかのアクションが登場する。
これは戦場マスに書かれたイベントマスや「御利益チップ」で使用できるものになる。
これら全てには「名称」が付いており、効果もその名前から受け取るイメージに応じたものになっている。これは情景をイメージしやすくなるのと同時に、アクションの効果が覚えやすくなるという機能を狙ったものだ。
(それぞれのアクションには名称とそれをモチーフにした効果がある)
他にも戦場カードの処理。
得点源となる戦場カードは全部で6枚存在し、ゲームでは常に1枚以上が休戦中という扱いで裏向きになっている。決算が発生すると今まで裏向きだったカードが表になり、決算を行った戦場カードは裏向きになる。
このようなループ構造を取っているのはコンポーネントを節約するという側面もあるが、果てしなく続く戦争を表したものにもなっている。
それぞれの陣営は栄誉の為に戦いを続け、一時は勝利を収めることもあるが、時間が経てばその痕跡はすべて消えて新たな戦争が始まる。
これは『解脱RTA』が戦争に参加する人間にスポットを当てた作品であり、陣営同士の争い自体はゲーム的に無為なものであることを示している。
(ゲーム中、戦場は戦争と平和を無限に繰り返す)
他にも『解脱RTA』には「テーマをシステムで言い換えている」部分がいくつも存在する。「テーマ」の部分だけでも楽しめる作品になったと思う。
あとは実際にプレイする中で情景をイメージして楽しんで欲しい。
【④まとめ】
・ボードゲームはいろんな方法で楽しむことが出来る。
・その中にはテーマやコンセプトに注目して楽しむという方法もある。
・『解脱RTA』の世界観は『火の鳥』に大きく影響を受けている。
・今作はテーマをベースにして色んなシステムを構築している。
これで全3回に亘った【解脱RTA】発売前パーフェクト攻略ガイドは終了である。
ここまで読んでくれたあなたには最大限の感謝を伝えたい。
今回の記事ではテーマの部分に焦点を当てて『解脱RTA』を掘り下げたが、テーマに興味が無ければ今作を楽しめないわけではない。
普通にテーマを考慮せずにただのゲームとして遊んでもきちんと面白いゲームに仕上がっていると僕は思っている。
重ね重ね言うが、ボードゲームは様々な角度で楽しむことが出来るのだ。
そして『解脱RTA』も色々な楽しみ方が出来る作品になるように製作したつもりだ。
システムに目を向けて、ゲームとして普通に遊んで楽しむもよし。
テーマに目を向けて、世界観がシステムにどう影響を与えているかを考えるのもよし。
制作者に目を向けて、ゲームを深く分析して楽しむのもいいだろう。
そういった様々な形で楽しんで欲しいから、僕はこんな紹介記事を書いているのだ。
このゲームを知ってくれたあなたが、どんな形であれゲームを楽しんでくれたなら僕にはとても嬉しく思う。
『解脱RTA』はゲームマーケット2022春にて頒布されるボードゲームだ。
予価は2000円。頒布はア26『サイシュピール』ブース内に執り行う。
出展日は4/23(土)のみ。日曜日の出展は無いので注意して欲しい。
ここまで読んでくれてありがとう!
次はゲームマーケット会場にてお会いしましょう!